iPS細胞 〜自分の細胞で治療する〜
そろそろ医学生らしいことも書いていこうと思います👩🏻⚕️
2007年11月 世界に衝撃のニュースが流れました
山中伸弥教授らのグループがヒトiPS細胞(人工多能性幹細胞)の作成に成功したと発表したのです
ほう…日本人がなんかすごい細胞作ったらしい🤔
実はこれ、ものすごい偉業なんです!!!!!!!!!!!
このiPS細胞のすごさは、再生医療の歴史を見ていくと実感できると思います
そもそも細胞は受精卵という2つの細胞から始まり、増殖・分化(特定の役割を持つ細胞(臓器の一部や皮膚や血液など)になること)をすることで多様で複雑な構造を作ります
元の細胞(受精卵、胚など)は何にでもなれる能力(これを分化能という)があるのですが、分化が進むと分化能はだんだん失われます
また分化した細胞は前の細胞に戻ることはできません
つまり最初はみんなイーブイで、環境によってシャワーズやブースター、サンダースなどになるが一度進化してしまうとイーブイには戻れないということです
じゃあその何でもなれる細胞で心臓や肝臓などを人工的に作ればより多くの人を救えるのでは!?
と研究がなされ、できたのがES細胞(胚性幹細胞)です
…え、iPS細胞じゃないの?
iPS細胞はもう少し先です
もうちょい歴史にお付き合いください←
このES細胞とはなんぞや、ということですがその名のとおり胚由来の幹細胞です
(胚とは卵子と精子が受精してできた受精卵が、細胞分裂を繰り返して細胞増殖をし発生が進んだ細胞体のことで、幹細胞とは分化能をもつ細胞のことです)
つまりムキムキの何でもなれる細胞です
人の手で何でもなれる細胞を作り出せました!
やったね!これを使って臓器を作れば他の人から肝臓もらわなくてもよくなるかもしれない!心臓移植のためのドナーを待たなくてよくなるかもしれない!
…しかしどの技術においても問題というものはあるものです
勘がいい人は気づいたかと思います
ヒトES細胞は、成長すれば1人の人として生まれてくるはずだった命から作られています
研究では不妊治療で使用されず廃棄予定の受精卵を用いるものの、倫理観の問題から研究もなかなか進められませんでした
また人にはそれぞれ自分の目印がついているので、自分とは異なる目印のものが体内に入ると拒絶反応を起こしてしまいます
ES細胞は自分ではないので拒絶反応の問題もあります
ES細胞の抱える倫理観の問題と拒絶反応の問題、これを一気に解決したのがiPS細胞です!
詳しい機序は省きますが、iPS細胞は自分の細胞(皮膚でも血でも)を取ってきて少ない操作で作られます
自分の細胞から作られるため命を犠牲にしないので倫理観の問題はありませんし、自分の細胞由来なので拒絶反応も起こりません
(ただし、分化の途中で悪性化することによる反応があるという結果が報告されています)
さらにiPS細胞のすごいところは、上記で何度も書いたように分化すると分化能が失われるとされていた定説を覆したところです
ポケモンではあり得ない話ですよね
医学界にとってもそうでした
今世界中でiPS細胞を使った研究が行われています
例えば日本では、7月末京都大学 パーキンソン病治験計画が発表されました
また今月には卵原細胞の作成に世界で初めて成功したとのことです
シートのような2次元のもの以上に、細胞集合体(臓器など)のような3次元のものを作るのは難しいです
しかしすごいスピードで研究が進み技術が確立しています
数十年、いや数年後にはiPS細胞を使った治療が一般で受けられるようになるかもしれません
自分の疾患を自分の細胞で治す日が来るのもそんなに遠くないのかもしれないですね
https://www.cira.kyoto-u.ac.jp
ここまで読んでくださりありがとうございました。わからない部分や用語があれば改善していきたいと思いますのでご指摘よろしくお願いします。